台湾へ旅行に行く計画を立てている方、ワクワクしますよね。おいしい小籠包にタピオカミルクティー、ノスタルジックな九份の街並み……想像するだけで胸が高鳴ります。でも、荷造りをしていてふと、「あれ、台湾ってどんな服を着ていけばいいんだろう?」と手が止まったことはありませんか。ガイドブックには「動きやすい服装で」としか書いていないことも多いですが、実はそれだけでは不十分なんです。
特に冠婚葬祭や現地の宗教施設、そして意外と知られていない法的なタブーについては、知らずにタブーを犯してしまうと、単に「恥ずかしい」だけで済まない深刻なトラブルに発展することさえあります。「台湾 服装 タブー」と検索してこの記事にたどり着いたあなたは、きっと現地の人々に失礼がないように、そして自分自身も嫌な思いをせずに旅を楽しみたいと考えている、とても慎重で賢明な方だと思います。文化が近く、親日的な台湾ですが、そこには明確な「異文化」のラインが存在します。そのルールを事前に知っておくことは、あなた自身の身を守るための最強のパスポートになるはずです。
- 台湾の結婚式や葬儀で絶対に避けるべき色のルール
- 寺院観光や温泉で恥をかかないための具体的なマナー
- 迷彩服や政治的なメッセージが招く法的なリスク
- 現地の気候や衛生事情に合わせた快適で安全な服装選び
この記事のスタンス この記事では、単なるファッションのアドバイスだけでなく、その背景にある「死生観」や「歴史的背景」、「衛生事情」まで踏み込んで解説します。理由を知れば、自然と正しい服装が選べるようになりますよ。
台湾の服装に関するタブーと冠婚葬祭

まずは、台湾旅行中に遭遇するかもしれない冠婚葬祭や、観光のメインとなる寺院、そして気候に合わせた服装のルールについてお話しします。特に「色」が持つ意味は日本とは大きく異なり、言葉以上に強いメッセージを発信してしまいます。悪気なく着ていた服が、現地の人にとっては「死」や「敵対」を意味しているかもしれない……そんな誤解を生まないための知識を身につけましょう。
結婚式では白と黒の服に要注意

もし台湾滞在中に、現地の友人の結婚式や披露宴に招待される機会があったら、あなたは何を着ていきますか?日本人の感覚だと、「花嫁の色である白は避けて、黒のパーティードレスや礼服なら失礼がないだろう」と考えがちですよね。日本では黒留袖や黒のフォーマルドレスは正装として定着しています。しかし、ここが台湾における最大のトラップ、「文化的錯覚」に陥りやすいポイントなんです。
結論から言うと、台湾の結婚式において「白」と「黒」は、基本的に避けるべきタブー色です。これは、伝統的な中華文化の死生観に深く根ざしています。
まず「白」についてですが、台湾を含む中華圏において、白は伝統的に「死装束」や「喪服」の色です。葬儀の際、遺族は無漂白の麻や白い布を身に纏う習慣があります。そのため、全身を白で統一したコーディネートで結婚式に参加することは、お祝いの席に「死の穢れ」や「哀悼の意」を持ち込む行為と解釈されてしまうのです。最近の台北などの都市部では、西洋文化の影響で純白のウェディングドレスが一般的になり、ゲストが白いブラウスや小物を身につけることは許容されつつあります。しかし、全身真っ白のワンピースに白い靴、といった装いは、依然として年配の親族や保守的な家庭からは「なんて不吉な格好なんだ」と眉をひそめられるリスクが非常に高いです。「花嫁と被るから」という日本の理由以上に、「縁起が悪いから」という切実な理由があることを覚えておいてください。
次に「黒」ですが、これもまた葬儀や悲しみを象徴する色であり、伝統的には「晦気(不運な気)」を招くとされています。新郎新婦の門出を祝う晴れやかな場に、全身黒ずくめの服で現れることは、二人の将来に対して暗い影を落とす行為と受け取られかねません。特に親族席や、地方の伝統的な宴会(辦桌など)では、黒い服は非常に嫌がられます。日本の感覚で「黒なら無難でシック」と思って着ていくと、周りは赤やピンクなどの明るい色ばかりで、自分だけがお葬式のような格好で浮いてしまう……なんてことになりかねません。
さらに、もう一つ避けるべき色が「赤」です。赤は中華圏において「吉祥」「富」「喜び」を象徴する最高に縁起の良い色ですが、結婚式という特定のシチュエーションにおいては「花嫁の特権色」となります。台湾の結婚式では、お色直しや送客(ゲストを見送る際)に、花嫁が伝統的な赤いチャイナドレス(旗袍)や赤いイブニングドレスを着用することが非常に多いのです。ゲストが鮮やかな赤のドレスを着ていくことは、花嫁と競合し、主役の座を奪おうとする「敵対的行為」と見なされる恐れがあります。風水的な観点からも、花嫁に向けられるべき「陽の気」を分散させてしまうと考えられています。
では、何を着ればいいのでしょうか?正解は「暖色系」の明るい色です。ピンク、桃色、紫、オレンジ、黄色などが最も歓迎されます。特にピンクは「桃花(恋愛運・良縁)」や幸福を象徴し、赤に近いけれど花嫁とは被らないため、最も安全で喜ばれる色です。男性の場合も、ネクタイやポケットチーフにピンクや明るい色を取り入れるのが「台湾流のスマートな祝福」です。日本のような白ネクタイのルールはありませんが、黒ネクタイは葬儀用なので絶対にNGです。
| 色 | 台湾での意味(結婚式) | 推奨度 |
|---|---|---|
| 白 | 死、喪服、不吉(全身白はNG) | ×(避けるべき) |
| 黒 | 悲しみ、不運、葬儀(全身黒はNG) | ×(避けるべき) |
| 赤 | 主役の色、花嫁と被る | △(小物はOKだが服は避ける) |
| ピンク | 幸福、良縁、祝福 | ◎(ベスト!) |
| 紫 | 高貴、幸運(紫気東来) | ◯(おすすめ) |
台湾のお葬式での服装マナーと色
結婚式のお話をしたので、対となる「お葬式(告別式)」についても触れておきましょう。観光で訪れて葬儀に参列する機会は稀かもしれませんが、ビジネスでの渡航や、台湾在住の知人が亡くなった場合など、急遽参列することになる可能性はゼロではありません。また、街中で葬儀のテントを見かけることもあります。そのような場面での振る舞いを知っておくことは、大人のマナーとして重要です。
台湾の葬儀における服装のタブーは、結婚式とは真逆になります。ここで絶対に避けるべきなのは、赤、ピンク、オレンジ、黄色といった「喜び」や「生命力」を連想させる暖色系の色です。これらを身につけて葬儀の場に行くことは、遺族に対する挑発、あるいは死者への冒涜と見なされ、人間関係に修復不可能な亀裂を生む可能性があります。たとえワンポイントであっても、赤いバッグや靴、派手な色のスカーフなどは外してから会場に向かうべきです。
適切な服装は、黒、白(無地のシャツ)、または濃紺などのダークカラーです。日本のような「漆黒の喪服」である必要は必ずしもありませんが、地味で慎み深い服装が求められます。男性ならダークスーツに黒か紺のネクタイ、女性なら黒や紺のアンサンブルやワンピースが無難です。台湾の葬儀スタイルは仏式、道教式、キリスト教式など多様ですが、どの形式であっても「色は地味に」という原則は変わりません。
また、アクセサリーに関しても日本より保守的な傾向があります。日本ではパールのネックレスは涙の象徴として許容されますが、台湾の伝統的な考え方では、葬儀の場に装飾品をつけていくこと自体を「おしゃれをしている」と捉え、不謹慎だと感じる人もいます。結婚指輪以外のアクセサリー、特にキラキラと光を反射する貴金属や宝石は、すべて外しておくのが最も安全で礼儀正しい選択です。
もう一つ注意したいのが、服装の「露出」です。暑い時期の葬儀であっても、ノースリーブやミニスカート、サンダル履きは厳禁です。死者を送る厳粛な場において、肌を露出することは極めて失礼にあたります。もし急なことで手持ちの服がない場合は、現地のユニクロやデパートで黒いパンツと白いシャツを調達するのが賢明です。「旅の恥はかき捨て」という言葉がありますが、葬儀の場での失敗は「かき捨て」では済まない深い傷を残すことを心に留めておいてください。
寺院参拝では露出と帽子に気をつける

台北の龍山寺や行天宮、台南の孔子廟など、台湾には歴史的で美しい寺院が数多く存在します。観光スポットとして大人気ですが、これらは単なる観光地ではなく、地元の人々が真剣に祈りを捧げる現役の信仰施設です。ここで意識すべき服装のマナーは、「神様に対する敬意をどう形で示すか」という点に集約されます。
まず、最も重要なのが「肌の露出」に関するタブーです。台湾の寺院は、タイやインドネシアの寺院のように入口で厳しく服装チェックをされたり、布を貸し出されたりすることは少ないかもしれません。しかし、だからといって「何でもOK」というわけではないのです。男女ともに、肩と膝が出る服装は神様に対する「不敬(失礼な行為)」と見なされます。
具体的には、タンクトップ、キャミソール、チューブトップ、スパゲッティストラップのトップスなどはNGです。ボトムスに関しても、膝上丈のミニスカートやショートパンツは避けるべきです。また、最近ファッションとして流行しているダメージジーンズ(大きく破れたズボン)も、寺院という文脈では「貧相」あるいは「不真面目」と解釈されることがあり、神前での礼儀に欠けると見なされる傾向があります。お腹(へそ出し)や背中が大きく開いたデザインも同様です。
台湾の夏は非常に蒸し暑いので、どうしても薄着になりがちですが、寺院参拝の日には袖のあるTシャツや、膝が隠れるロングスカート、薄手のパンツを選ぶようにしましょう。もし露出の多い服を着ている場合は、参拝の時だけカーディガンや大判のストールを羽織って肌を隠すのが、スマートで敬意ある旅人の振る舞いです。
次に気をつけたいのが「帽子とサングラス」です。屋外にある香炉の前や、本堂の神像・仏像の前で手を合わせる際は、必ず帽子とサングラスを外してください。これは、神様に対して自分の素顔を見せ、隠し事のない誠実な心で向き合うという意味が込められています。「日差しが強いから」という理由でつけっぱなしにしている観光客を見かけますが、現地の方々はしっかりと帽子を取って頭を下げています。その姿に倣うことが、異文化への最大のリスペクトです。
履物については、多くの台湾の寺院では境内や回廊は土足で歩くことができます。日本のお寺のように入口ですべて靴を脱ぐわけではありません。しかし、仏像が安置されている本堂の内陣や、信者が跪いて祈祷を行う特定のカーペットエリアに上がる際には、靴を脱ぐことが求められる場合があります。そのため、脱ぎ履きに手間取る編み上げブーツなどよりは、スニーカーやフラットシューズの方が便利です。サンダルに関しては、バックストラップのないビーチサンダル(ゴム草履)はカジュアルすぎて失礼だと考える層もいますが、台湾の気候を考慮すると、参拝客の間では比較的容認されています。ただし、格式高い儀式に参加する場合や、願い事を叶えてもらうために真剣にお参りする場合は、つま先の隠れる靴を選んだ方が心象は良いでしょう。
デング熱予防で黒い服は避けるべき
ここでは少し視点を変えて、文化的なマナーではなく、あなたの「健康と安全」を守るための服装ルールについてお話しします。台湾、特に北回帰線より南にある台南や高雄などの南部地域では、蚊が媒介する感染症「デング熱(Dengue Fever)」が流行することがあります。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、発症すると高熱や激しい関節痛に襲われる辛い病気です。
実は、このデング熱を媒介する「ヒトスジシマカ」や「ネッタイシマカ」には、ある特定の色の好みが存在します。それが「黒」や「濃紺」などの暗い色です。蚊は暗い色に誘引される習性を持っているため、デング熱の流行期に全身黒ずくめのファッションで草木のある場所や市場を歩き回ることは、自ら「動く標的」になっているようなものなのです。
台湾の衛生当局(CDC)や日本の検疫所も、デング熱の予防策として「肌の露出を避けること」に加え、「白や淡い色(薄い黄色など)の服を着用すること」を強く推奨しています。明るい色は蚊が寄ってきにくいだけでなく、もし服に蚊が止まっても発見しやすいという利点があります。
「自分はおしゃれが好きだから黒しか着ない」というこだわりがある方もいるかもしれませんが、デング熱の警報が出ている地域では、そのこだわりが命取りになるリスクがあります。また、現地の人々はデング熱の恐ろしさをよく知っているため、流行期に黒い服で短パン姿の観光客を見ると、「危機管理ができていない」「公衆衛生への意識が低い」と冷ややかな目で見られてしまう可能性もあります。
具体的な対策としては、蚊が多い夏場や南部へ行く際は、白やベージュ、パステルカラーのリネンシャツや長ズボンを用意するのがベストです。さらに、虫除けスプレー(ディートやイカリジン配合のもの)を併用することで、防御率は格段に上がります。旅先で病気になってしまっては元も子もありません。ファッションよりも「生存」を優先した服装選びが、台湾旅行を成功させる鍵となります。
公式情報もチェック デング熱の流行状況や予防法については、公的機関の情報を確認することをおすすめします。 (出典:厚生労働省検疫所FORTH『デング熱について』)
1月2月の服装と室内防寒の重要性

「台湾は沖縄よりも南にあるし、常夏の島だよね」……もしあなたがそう思って、真冬(1月〜2月)の台湾旅行にTシャツと薄手のパーカーだけで行こうとしているなら、今すぐその荷造りを止めてください。それは、多くの日本人観光客が陥る、最も典型的で過酷な「罠」の一つです。
確かに、台湾の冬の平均気温は15℃前後あり、数字だけ見れば日本の春や秋のように思えます。しかし、台湾の冬には「湿気寒(Humid Cold)」と呼ばれる特有の寒さがあります。湿度が高いために、空気が冷たく重く肌にまとわりつき、体感温度は気温よりも5℃〜10℃近く低く感じられることがあるのです。特に台北などの北部では、冬はずっと小雨が降り続き、日照時間が極端に少ないため、底冷えする寒さが続きます。
そして最大の問題は、台湾の建物の構造と暖房事情にあります。台湾の住宅や安宿、さらには一部の公共施設やレストランでさえ、「冷房設備は完璧だけど、暖房設備がない(または非常に弱い)」という場所が圧倒的に多いのです。建物は暑い夏を快適に過ごすために、熱を逃がしやすい石造りの床やコンクリートの壁で作られています。これが冬になると仇となり、冷気をたっぷりと蓄え、室内がまるで冷蔵庫のように冷え切ってしまうのです。「外より中の方が寒い」という逆転現象も珍しくありません。
ホテルで暖房をつけようと思ったら、リモコンに「暖房」のボタンがなく、送風と冷房しかなかった……というのは、台湾旅行のあるある話です。高級ホテルなら暖房完備の場合が多いですが、中級以下のホテルや民宿(B&B)では注意が必要です。
この時期の服装として推奨されるのは、「重ね着(レイヤリング)」ができるスタイルです。日中、晴れれば少し暖かくなることもあるので、調節しやすい服装がベストです。具体的には、長袖のシャツやカットソーの上に、セーターやフリースを着て、さらに風を通さないジャケットやコートを羽織ります。そして何より重要なのが、「インナー」と「コンパクトなダウン」です。ユニクロのヒートテックのような発熱性インナーと、ウルトラライトダウンのような持ち運び可能な防寒着は、台湾の冬の必需品と言っても過言ではありません。これらは室内で暖房がない時に、パジャマの上から羽織ったり、インナーとして着込んだりして命綱になります。
「南国だから」という先入観を捨て、日本の晩秋〜初冬くらいの装備をしていくことが、体調を崩さず、美味しい台湾グルメを全力で楽しむための秘訣です。足元も、冷たい雨が染み込まない防水性のあるブーツやスニーカーを選び、厚手の靴下を持参することをお忘れなく。
台湾の服装タブーと温泉や法的リスク
台湾旅行の楽しみは街歩きだけではありません。豊かな自然が生んだ温泉や、歴史を感じるスポットも魅力です。しかし、そこには日本とは異なる独自のルールや、時には法律に関わる深刻なリスクも潜んでいます。ここからは、さらに一歩踏み込んだ「場所別・状況別」のタブーについて解説します。
温泉では水泳帽と水着着用がルール

台湾は、北投、陽明山、関子嶺、知本など、全土に温泉が湧き出る温泉天国です。日本統治時代の影響もあり、温泉文化が根付いていますが、その入浴スタイルは日本のそれとは決定的に異なる部分があります。ここで多くの日本人がカルチャーショックを受け、時には入口で止められてしまうのが「水泳帽(スイムキャップ)」の存在です。
台湾の温泉施設は大きく分けて二つのタイプがあります。一つは日本と同じ「男女別・裸で入る大浴場(日式)」、もう一つは「男女混浴・水着で入る露天風呂やスパエリア(台湾式)」です。前者の日式風呂では日本と同じルールで入浴できますが、問題は後者の「水着着用エリア」です。ここでは、水着の着用はもちろんのこと、「水泳帽の着用」が絶対的な義務となっている場所がほとんどです。
このルールは、「髪の毛が一本でもお湯に落ちることを極端に嫌う」という台湾独自の衛生観念に基づいています。「髪を束ねているから」「頭をお湯につけないから」といった理由は通用しませんし、「スキンヘッドだから被らなくていいだろう」という理屈も通りません。髪の有無や長さにかかわらず、浴槽に入る全員が帽子を被らなければならないのです。もし帽子を被らずに入水しようとすると、監視員に鋭い笛の音で警告され、大勢の前で注意されることになります。
もし水泳帽を忘れてしまった場合は、施設の売店で購入することになりますが、デザインが選べなかったり、観光地価格で割高だったりすることが多いです。そのため、台湾で温泉やホテルのプールに行く予定があるなら、日本から使い慣れた水泳帽を持参するのが賢い選択です。100円ショップで売っているような簡易的なものでも構いません。
さらに、男性の水着に関しても注意点があります。一部の厳格なプールや温泉施設では、サーフパンツ(ボードショーツ)や、ポケットが付いたダボっとした綿混素材の海パンが禁止されている場合があります。理由は、ポケットの中に砂利やゴミ、タバコの吸い殻などが紛れ込んでおり、それが水質を汚染する恐れがあるからです。また、綿素材の繊維がフィルターを詰まらせる原因になるとも考えられています。最も安全で文句を言われないのは、体にフィットする競泳用(スパッツ型やブリーフ型)の水着です。「リゾートだからおしゃれなサーフパンツで」と思っていると、着替え室でNGを出される可能性があるので注意してください。
タトゥー(入れ墨)への寛容性 日本の温泉ではタブー視されるタトゥーですが、台湾の「水着着用エリア」では非常に寛容です。タトゥーを入れた若者やお年寄りが普通に入浴しており、それを理由に退場させられることは稀です。ただし、日系の高級旅館(加賀屋など)や一部の「完全日式・裸風呂」では、日本のルールを踏襲してタトゥー禁止としている場合があるので、心配な場合は事前に確認するか、ラッシュガードで隠す準備をしておくと安心です。
迷彩服は軍事施設周辺で誤解を招く
ファッションの一部としてすっかり定着している「迷彩柄(カモフラージュ)」。Tシャツやカーゴパンツ、リュックサックなど、日常的に愛用している方も多いでしょう。インターネット上には「台湾では迷彩服が違法である」という極端な噂が流れることもありますが、これは半分正解で、半分間違いです。一般市民や観光客が、街中でファッションとして迷彩柄の服を着ること自体は違法ではありませんし、台北の原宿と呼ばれる西門町に行けば、迷彩ファッションを楽しむ若者をたくさん見かけます。
しかし、着用する「場所」と「スタイル」によっては、深刻な法的リスクやトラブルを招く可能性があります。特に注意が必要なのが、軍事基地、軍民共用空港(松山空港、台南空港、花蓮空港など)、および重要インフラ施設の周辺です。
台湾は地政学的に繊細な状況に置かれており、軍事施設へのスパイ行為や偵察行為に対して、神経質なまでに警戒を強めています。2024年から2025年にかけて施行・強化された「軍事営区安全維護条例」などにより、軍事エリア周辺での不審な行動に対する監視は厳格化されています。このような場所で、全身迷彩服を着て、タクティカルベストやコンバットブーツのような「本気すぎる」装備を身につけ、さらに望遠レンズ付きのカメラで撮影を行っていたらどうなるでしょうか。
十中八九、警備兵や警察官に呼び止められ、厳しい職務質問を受けることになるでしょう。最悪の場合、スパイ容疑をかけられたり、カメラのデータを没収されたりする可能性も否定できません。「ただのファッションです」「記念撮影です」という言い訳が、ピリピリした現場で通用するとは限らないのです。
さらに、法律的な観点からも注意が必要です。台湾の刑法(第159条)では、公務員の服飾や徽章を公然と不正に使用することを禁じています。つまり、現行の台湾軍の軍服や、階級章・部隊章が付いた制服を着用し、軍人と誤認させるような行為は違法となります。コスプレイベントやサバイバルゲームのフィールド内なら問題ありませんが、公共の場所で「本物」と見間違えるようなフル装備をするのは絶対にやめましょう。
ミリタリーファッションが好きな方は、台湾旅行中はあくまで「カジュアルな街着」として楽しめる範囲の迷彩柄(Tシャツやハーフパンツなど)に留め、基地周辺や空港ではそれすらも避ける、くらいの慎重さがあってちょうど良いかもしれません。
政治的メッセージのある服と越境リスク
台湾はアジアの中でもトップクラスに言論の自由が保障されている民主主義国家です。街中で「台湾独立」や特定の政党を支持するスローガンが書かれたTシャツを着て歩いていても、台湾の法律で罰せられることはまずありません。しかし、もし今回の旅行プランが「台湾の後に、香港や中国本土へ移動する」という周遊型のものである場合、その一枚のTシャツがあなたの身を危険に晒す「時限爆弾」になる可能性があります。
特に注意が必要なのが、2019年の香港民主化デモに関連するスローガン(「光復香港、時代革命」など)や、天安門事件を想起させるデザイン、あるいは台湾の政治的地位に関する強い主張がプリントされた衣類やグッズです。これらを所持した状態で香港や中国本土に入国しようとすると、空港の税関検査で別室に連れて行かれ、長時間拘束されたり、香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕されたり、最悪の場合は入国拒否(強制送還)になったりするリスクが現実として存在します。
「台湾で買ったお土産だから大丈夫だろう」という甘い考えは通用しません。当局は、あなたが「どこで買ったか」ではなく、「何を所持し、どのような思想を表明しているか」を見ています。また、最近ではSNSのチェックも厳しくなっており、台湾滞在中にそのような服を着て撮影した写真をSNSにアップしていたことで、入境時に問題視されるケース(域外適用)も懸念されています。
もちろん、台湾国内だけで過ごすのであれば、どのような思想の服を着ようと個人の自由です。しかし、国境を越える移動が含まれる場合は、その国の政治的なセンシティビティ(敏感さ)を考慮しなければなりません。「たかがファッション」と思わずに、政治的なメッセージを含んだ衣類は一切持参しない、あるいは台湾から出国する際に郵送で日本の自宅へ送り返すなど、徹底したリスク管理を行うことが、無事に家に帰るための鉄則です。
雨の日の靴や夜市での足元マナー

台湾旅行の足元選びは、実は服選び以上に重要です。なぜなら、台湾は「雨」と「汚れ」という二つの強敵が待ち構えているからです。
まず「雨」について。台湾の夏は、午後になるとバケツをひっくり返したようなスコール(午后雷雨)が頻繁に発生します。また、台風シーズンでなくても雨量は日本より多めです。そんな時に、お気に入りのキャンバス地のスニーカーや、吸水性の高いムートンブーツなどを履いていると悲劇が起きます。一度濡れるとなかなか乾かず、高温多湿な気候も相まって、翌日には生乾きの嫌な臭いを発し、水虫の原因にもなりかねません。現地の知恵として、雨の日には濡れても良いサンダルや、プラスチック製のスリッパで移動し、オフィスや学校に着いてから乾いた靴に履き替える人が多いのはこのためです。
しかし、「じゃあサンダル一足で行けばいいの?」というと、そう単純ではありません。ここで登場するのが「夜市(ナイトマーケット)」の問題です。台湾観光のハイライトである夜市は、狭い通路に屋台がひしめき合い、大変な混雑になります。足を踏まれることは日常茶飯事ですし、屋台からは高温の油が跳ねたり、誰かがこぼした熱いスープや、食べた後の串が地面に落ちていたりすることもあります。
さらに、あまり考えたくないことですが、市場の地面には大きなゴキブリやネズミが走り回っていることも珍しくありません。そんな場所を、つま先が出ているサンダルやミュールで歩くのは、怪我のリスクが高く、衛生的にも非常にリスキーです。
そこでおすすめなのが、「防水・撥水加工された、濃い色のウォーキングシューズ」です。これなら急な雨にも対応でき、夜市の人混みで足を踏まれても痛くありません。また、夜市独特の油煙や地面の汚れがついても、濃い色なら目立ちにくく、ホテルに戻ってからウェットティッシュで拭き取ればきれいになります。白や淡い色の高級スニーカーは、一度の夜市訪問で見るも無惨な姿になってしまう可能性が高いので、台湾旅行では避けるのが無難です。
「裸足」は絶対NG どれだけ雨が降って靴が濡れたとしても、街中を裸足で歩くことだけは絶対にやめましょう。台湾において裸足で外を歩く行為は、極度の貧困や精神的な錯乱を連想させるため、社会的なタブー視線で見られます。最低限の履物を履くことは、社会人としての尊厳を守るラインなのです。
台湾の服装タブーを理解して安全な旅を
ここまで、台湾における服装のタブーやマナー、そして現地ならではの事情について詳しく解説してきました。一見すると日本と似ているようでいて、その根底にある「死生観(色へのこだわり)」、「衛生観念(水泳帽やデング熱対策)」、そして「地政学的な緊張感」は、私たち日本人の想像を超えるものがあったのではないでしょうか。
「色」に敏感になり、冠婚葬祭では白と黒の使い分けに注意すること。「頭」を守るために、温泉には必ず水泳帽を持参すること。「場所」の空気を読み、寺院では露出を控え、軍事施設周辺では誤解を招く格好を避けること。そして「政治」を身に纏うリスクを理解し、越境旅行では中立性を保つこと。
これらは決して、あなたの旅を窮屈にするためのルールではありません。むしろ、これらの「見えないルール」を知っていることで、あなたは無用なトラブルや恥ずかしい思いをすることなく、現地の人々とより深いレベルで交流し、台湾という素晴らしい土地の魅力を100%味わうことができるようになります。
台湾の人々は基本的に親日で、外国人に対してとても寛容で温かい心を持っています。もし間違った服装をしてしまっても、優しく教えてくれることが多いでしょう。しかし、ゲストである私たち自身が彼らの文化や歴史に敬意を払い、「郷に入っては郷に従う」姿勢を見せることで、その旅はより思い出深く、素敵なものになるはずです。ぜひ、今回の記事を参考にして、準備万端で快適かつ安全な台湾旅行を楽しんできてくださいね!
免責事項 本記事の情報は執筆時点の一般的な調査に基づいています。現地の法律や施設のルールは変更される可能性がありますので、最終的な判断は公式サイト等でご確認いただくか、現地の指示に従ってください。





